>
> きっかけは、
> 歯医者の待合室だった。
>
>
> 偶然となりの席で、
> 同じ曜日、
> 同じ時間帯の予約だった。
>
>
>
> ただ、それだけだった。
>
>
> 次の予約の時に、
> 彼は手帳を取り出して、
> 来れそうな日を探す。
>
>
> その時、偶然彼の指定する日が、
> 私の予約した日で、
>
> 私の予約した時間帯しか無理そうだと困っていたので、
> 声をかけたのがきっかけだった。
>
> 「ありがとうございます。助かりました。」
> と、彼は穏やかそうに笑った。
>
> 「いえ、いいんです。
> 私、木曜日は休みの日なので、
> 何時でも大丈夫なので。」
>
> その日はちょうど12時前で、
> もしよければ、
> お礼にご飯をと言われた。
>
> 断ったけど、
> 遠慮しないでと言われ、
> 予定もなかったので、
> お言葉に甘えることにしたのだった。
>
> 「すいません、なんだかごちそうになってしまって。」
>
> 「気にしないでください。
> いつも一人で食べてたので。
> ここの料理、おいしいんですよ。」
> と、彼おすすめのイタリアンに連れて行ってもらった。
>
> ランチのパスタとスープのセットを頼み、
> 彼と軽く話した。
>
> どちらも急な虫歯で、
> 同じ時期に痛み出していた。
>
> 「こんな偶然、あるんですね(笑)」
>
> 「びっくりです。」
>
> 私はアパレルショップで働いていた。
> 彼の薄いグレーのスーツは、
> 私好みだった。
>
> じゃぁまたと言って別れたけど、
> 連絡先も交換していないし、
> これっきりだと思った。
>
> 思っていた。
>
> 歯医者で会ったときに、
> そういえば、譲ったんだったと思い出した。
>
> 「こんにちわ。」と、
> 彼が挨拶をしてくれた。
>
> 「こんにちわ。」
> なんだか、不安な歯医者で顔見知りができたので、
> 少し嬉しく思った。
>
> お互い、
> どうやら、
> 次で治療が終わりみたいだった。
>
> 最後の治療の日にも偶然また会って、
> 完治祝いにお茶でもと誘われた。
>
> 彼とカフェで他愛ない話をする。
> 彼はいつもどっしり物静かに構えている人で、
> 安心感がとてもあった。
>
> 帰り際、
> 「すいません、連絡先、交換しませんか?」と、
> はにかみながら話す彼に、
> 好感度が上がった。
>
> 「えぇ、もちろん!」
> 思わず、前のめりに答えてしまった。
>
> それからぼちぼちラインのやり取りをした。
> 何度か食事に行った。
> 出会ったのは春だった。
>
> 夏に花火を見に行った帰り道に告白されて、
> 付き合うことになった。
>
> 秋に紅葉を見に行った時だった。
> 「実は、裁判官の仕事をしているんだ。」と、
> 彼がまっすぐに私を見ながら話してくれた。
>
> 「そ、うなんだ。」
> 会ったことがなかった、
> 裁判官という職種の人に。
> テレビでしか見たことがなかった。
>
> クリスマスディナーの時だった。
> いつも姿勢の正しい彼が少し猫背だった。
>
> 「どうしたの?
> なんか元気ないみたいだけど。」
>
> 「あぁ、ごめんね。」
> 彼は力なく笑う。
>
> 「疲れてるの?」
>
> 「ちょっとね。」
>
> 彼の職業柄、
> コンプライアンスは厳しそうで、
> どこまで踏み込んでいいのかが、
> 私にはわからなかった。
>
> 「実はさ。」と彼は話そうとしたけど、
> 口をつぐんだ。
>
> 「やっぱり、なんでもない。(笑)
> 今日、クリスマスだよね?
> 時計、買ってみたんだ。」
> と、私にプレゼントをくれた。
>
> 「あ、りがとう。」
> と、ぎこちなくもらってしまった。
> 貰った時計は、
> 以前に私が「わぁ〜可愛い!」と何気なく言った時計だった。
>
> 私は彼にカシミヤのマフラーをプレゼントした。
>
> 「ありがとう!」
> 「寒くて困ってたんだ。」と彼は笑う。
>
> 私はやっぱり、
> 彼の薄いグレーのスーツ姿が好きだ。
>
> おいしいディナーのコース料理に舌鼓を打ちながら、
> 明るく振舞ってくれている彼だけど、
> 無理しているのがよくわかる。
>
>
> 「 大変だよね、
> 人を裁くのってさ……。」
>
> メインの牛のステーキを切り分けながら、
> ぽろっと言ってしまった。
>
> 「 そうだね。
> 俺一人って訳ではないけれど、
> 少なくとも、被告人と周りの人達の人生に大きな影響を与える決断をするわけだから、
> どうしても、精神的に参っちゃうんだよ。」
>
> 初めて、彼の弱音を聞いた。
>
> 「うん。」
>
> 「でもさ、春香と出会って、
> 心苦しい時も助けてもらったよ?
> いつも、ありがとう。」
> と、優しく笑う彼が好きだ。
>
> 自分の事で精一杯なはずなのに、
> いつも周りに思いやりを持って
> 冷静に客観的に見れる、
> 彼が私は好きなのだ。
>
> 「そんなことないよ。
> 私は一緒にいることしかできないし。」
>
> 「十分だよ。」と、
> 彼は赤ワインを口にする。
>
> 「だったら、うれしい。
> 私も、ノルマ達成できないときとか不安になるけど、
> 高志さんと一緒にいると、
> 安心するよ。」
>
> 「なら、よかった。」
>
> おいしいねと彼はいつもの調子で
> 私に笑いかける。
> 相談をしたら
> 彼女はあっけからんと笑って言った。
>
> 「人それぞれでいいじゃん。」
>
> 私は厳しすぎるのだろうか?
> 自分の価値観を押し付けすぎているのだろうか?
>
> 「でもさ、坂上さんたらひどいと思わない?」
>
> 彼女とは毎週日曜日の昼下がりにお茶をする仲である。
> 毎回私はこの週に起こった出来事を彼女に話すのである。
>
> 彼女はいつも不満を漏らさず聞いてくれる。
>
> 「そうそう、田村さんもね、こんなこと言ってたのよ。」
>
> 私の口からは堰を切ったように、
> 言葉があふれ出す。
>
> 「ねぇ、山本さんの話知ってる?」
>
> 信ぴょう性なんてどうでもいいのだ。
> 嫌な事、むかついたこと、
> 噂話、
> 自分のことではない、
> 他人について、
> 私は彼女に話して聞かせる。
>
> 彼女は、私のカウンセラーだった。
> 人の目が気になるあまり、
> 自分のことをそっちのけにしてしまう私は、
> 数年前、彼女と出会い、
> こうして週1でカウンセリングしてもらっている。
>
> 「はい。では、川本さんについて教えてください。」
>
> この一言で、
> 私ははっと我にかえる。
>
> 「私、ですか…?」
>
> 「ええ。」
>
> 「特に、何も。」
>
> 「今週は何をしていましたか?」
>
> 私は私自身に興味を持たないといけない。
>
> だから先生は魔法の言葉を私に囁く。
>
>
> 「人それぞれでいいじゃないですか。」と。
> 「ねぇ?」
> 「なに?」
> 「もしさ、私が先に死んだらどうする?」
> 「は?」
> 「もしもだよ。(笑)」
> 「嫌なもしもだな。」
> 「ねぇ、どうする?」
> 「どうもしねぇ。泣く。」
> 「それだけ?」
> 「あ?」
> 「私、夢があってさ。」
> 「何?」
> 「立派な墓とかなんていらなくて。」
> 「うん。」
> 「小さい石ころ一個だけでもいいんだけど。」
> 「なに?」
> 「家の庭の端っこにたててもらってさ。」
> 「ああ。」
> 「年に一回でもいいから、拝んで欲しい。」
> 「なにそれ。」
> 「それだけで、充分。」
> 「変なの。」
> 「変じゃないよ。」
> 「そうか?」
> 「今じゃ、お墓も大変だってきくし。」
> 「もうそんな心配してんの?」
> 「するよ。」
> 「早くねぇ?」
> 「早くないよ、生まれたらいずれは死ぬ訳なんだしさ。」
> 「まぁな。」
> 「ねぇ。」
> 「なに?」
> 「私の夢、お願いしてもいい?」
>
>
>
>
>
>
>
> 寝 顔 に ご 乱 心 。
> (こんな夢、叶えたくないけど。)(9歳下だけど。)
>
> 交通事故にあった。
> 突然だった。
> 学校の帰り道、
> 曲がり角。
>
> よそ見運転だった。
>
> 幸い命に別状はなく、
> 両足の骨折ですんだ。
>
> 外に出るのが怖くなった。
> また車がぶつかってきたらと思うと、
> 身体が震えた。
>
> 同時に二本の脚の骨なんて折ったこともなく、
> 歩くのも不安になった。
>
> リハビリが始まった。
>
> 痛かった。
> 事故の時の痛み、恐怖とはまた違った、
> 慢性的な痛み、心の傷。
>
> (なんで、私が。)
>
> 転んだ拍子に思わずそう思ってしまった。
>
> お見舞いに来てくれる家族も友達もいる。
> ぶつかった相手も、
> 逃げずに詫びてくれている。
>
> 命だって助かった。
> 足だって治る。
>
> よかったじゃないか。
> これ以上ない奇跡だ。
>
> そんなことはわかっていても、
> 弱音と愚痴が口から溢れてしまいそうだ。
>
> そんな時、
> 同じリハビリルームで、
> 義足の同い年くらいの女の子と一緒になった。
>
> その子も何度も転んでいた。
> それでも、何度も立ち上がっては歩きだす。
>
> (すごい。)
>
> 転んだって前を向いているのが。
> 私にはない強さを見た瞬間だった。
>
> ずっと見ていたからか、
> その子とふいに目があって、
> 「頑張ろう!」と声をかけられた。
>
> そうだ、
> 頑張ろう。
>
> 私は、何も失ってなどなかったのだから。
>
> 彼女だって、
> 失ってなどないのだ。
>
> あんな凛とした強さを、
> 私は持っているのだろうか?
> 「よしこちゃん。」
> 皆私のことをよしこちゃんと呼ぶ。
>
> 「なぁに?」
> 呼ばれたら笑顔で振り向く。
>
> なんでもいいよ。
>
> 必要としてくれるなら。
> 嫌われないなら。
>
> 「よしこちゃん。」
>
> 「なぁに?」
>
> どんなことでも聞いてきた。
> だからお願い、
> 嫌いにならないで。
>
> 「よしこちゃん。」
>
> 「なぁに?」
>
> 具合が悪くても、
> 私は常に笑顔で答えてきた。
>
> 「よしこちゃん。」
>
> 「なぁに?」
>
> 疲れてても何してても、
> 私の時間を全部あげてきたじゃない。
>
> 何が不満なの?
>
> 「よしこちゃんって、
> 誰にでもいい顔して、
> 八方美人だよね。」
>
> 誰かが私のことを美人っていう。
> 八方美人だっていう。
>
> ひどい。
>
> こんなに私は身を粉にしているのに。
>
> あんまりだ。
>
> 「よしこちゃんは、
> 嫌といえないのさ。」
>
>
> 「よしこちゃんは、
> 自分の意見がないのかしら?」
>
> いい子だったはずなのに、
> なんだか、
> あれあれ、困った子みたいになってきてる。
>
> いやだいやだ。
> 私はそんな子じゃない。
>
> 「よしこちゃん。」
>
> やめてやめて、
> 名前を呼ばないで。
>
> 怖い、
> こわい。
> 振り向くのが怖い。
>
> 「ねぇ、よしこちゃんったら。」
>
> 「な、なぁに?」
>
> 緊張で舌が乾く。
> 思わず、笑顔もひきつってしまった。
>
> 「どうしたの?
> 具合でも悪いの?」
>
> 「そんなことない、大丈夫。」
>
> 「ならよかった。」
>
> 私は、あなたが、
> あなたたちが怖くて、
> 怖くて、仕方ないわ。
>
>
>
>
>
>
> 「ねぇ、よしこちゃん?」
> しおりちゃんへ
>
> 元気してるかい?
> 最近、全く音沙汰がなくて心配していたよ。
>
> 今は何をしてる?
>
> 俺は相変わらず農家で、
> 野菜を作ってる。
> 今年とれた野菜も一緒に送るから、
> 食べてみて。
>
> きっと、うめぇーぞ(笑)
>
> しおりちゃんはさ、
> 昔からなんでも一人で背負いこむ癖があるから、
> 俺、心配なんだ。
>
> そういえば、
> 小学校の時もさ、
> 俺がおもらししちゃったときも、
> 助けてくれたよな。
> ありがとう。
>
> そんときから、
> しおりちゃんは
> 女の子なんだけどさ、
> 俺のヒーローなんだよ。
>
> 小さい村だろ?
> 中学でも言われ続けて俺は参ったよ、
> 正直(笑)
>
> でも、年頃なのに、
> しおりちゃんは普段と変わらず接してくれたろ?
>
> 同じだよ。
>
> しおりちゃんは何も悪くない。
> 騙されちゃっただけなんだろ?
> しおりちゃんの優しい気持ちをつけこんでさ、
> 許せねぇよ。
>
> 今、楽しいことあるか?
> 心配でたまりません。
>
> あの時はびっくりしたよ。
> まさかこの村から弁護士先生なんてなれるやつが
> いるとは思わなかったから。
>
> 気づかずに、
> 詐欺グループの顧問弁護士しちゃったこと、
> 村では賛否両論だよ。
>
> 可哀想っていうおっかあもいれば、
> しゃらくさい仕事なんてするから自業自得っていうおとうもいる。
>
> 嫉妬してんだよ、みんな。
>
> この村が好きだって気持ちもあれば、
> 東京に憧れてる気持ちもある。
>
> しおりちゃんは、
> 俺たちの一歩先を進んじまったからな。
>
> でもなぁ、
> 戻ってきたっていいんじゃないかって思ってる。
>
> 仕事ならなんでもある。
> 俺と一緒に畑したっていいわけだしな(笑)
>
> 意気地にならないで、
> 帰ってこい。
>
> 皆、待ってる。
>
> 帰る場所がねぇなんて思うなよ。
> この村が、
> しおりちゃんが生まれて育ったこの村は、
> いつまでも、
> みんなのものだ。
>
> 忘れないでくれよ……。
>
> 長くなっちまったけど、
> 俺は待ってるから。
>
> それだけ伝えたかったんだ。
>
> じゃぁな。
> 元気でな。
>
> またな!
> バシャバシャ。
> もう何日練習してきただろうか。
>
> バシャバシャ。
> 25mを永遠に往復する日々。
> 私は何m泳いできただろうか?
>
> でも、大事なのは距離ではなく、
> タイムなのだ。
>
> 1秒でも早く、
> 私は泳がなければいけない。
>
> それが夢でもあるからだ。
>
> バシャバシャ。
> 昨日も今日も明日も、
> 私は泳ぐ。
>
> 「かおりさん、お疲れさまです。」
> 「ありがとう。」
> タオルを受け取る。
>
> 「かおりさん、
> あんまりこんつめないほうがよくないですか?」
>
> 「そんなことないよ。」
>
> ハァーーー。
> 深呼吸する。
>
> 深い息が早く泳ぐコツだ。
> 息継ぎを少なくしたい。
> 息継ぎの間にいかに長く進むことができるか。
>
> 「でも、先月より5秒早くなりましたね。」
> 「ほんと?(笑)」
> 「来月もこの調子で行けば、
> 大会ベスト新記録間違いなしですよ。」
>
> 「だといいなぁ。」
>
> もっともっと、
> 早く泳ぎたい。
> 1秒でも縮めることができたら、
> 自分のことを褒めてやりたい。
>
> よくやったって。
> まだできるねって。
>
> 私は私を諦めたくない。
>
> だから、
> 今日も休憩程々に、
> 私は可能な限り泳ぐのだ。
>
> 水中に居る時間を長くしたい。
> 水の中が好きだから。
>
> これは私が唯一誇れる好きな事だから。
> 映画のレイトショーを見た帰り道だった。
> 外国のなんかマイナーな映画だった。
> 人もまばらで、
> 話も字幕で、
> なんか少しうとうとしちゃって。
>
> そんな帰り道だった。
>
> 気が付くと隣に同じ歩で歩く男性が居て、
> ぱって顔を見ると、
> 爽やかに笑う。
>
> 「あのぉ〜、スカウトなんですけど。」
>
> 「は?」
>
> 「実は夜の仕事のスカウトしてまして。
> 興味ありますか?(笑)」
>
> 「ないです。」
>
> 「お姉さんは今何の仕事してるの?」
>
> 「事務です。」
>
> 「毎日楽しいですかぁ〜?」
> 「普通です、普通。」
>
> 「年、聞いてもいい?」
> 「25ですけど。」
> 「そうなんだ。」
>
> なんなのこの人、
> ちょっと怖い。
>
> 「お姉さんは、将来の夢とかってありますか?」
> 「夢?」
>
> 「お兄さんには、あるの?」
>
> 「俺?あるっすよ〜。
> 世界平和でぇすっ。」
>
> 「はぁ。」
>
> 「で、お姉さんは?」
>
> 「あ、じゃぁ、私も、それ。
> 世界平和が夢。」
>
> 「うえ?まじっすか?
> 同じじゃないですか?
> やったー。
> めっちゃ奇遇っすね(笑)」
>
> 「だね。」
>
> 「俺実は介護のほうで開業したいと思っててぇ。
> まずは訪問介護からかなみたいな感じでぇ。
> 飲み屋で知り合った師匠みたいな人がいて、
> その人からアドバイスうけてるんで、
> 大丈夫なんですよぉ(笑)
> 俺の血のつながらない兄貴みたいな感じで!」
>
> 「へぇ。」
>
> 「お姉さんは、介護は興味ある?」
>
> 「私、介護福祉士の資格持ってるよ。」
>
> 「うえ?なんで?」
>
> 「専門、介護だったから。
> でも辞めて今の事務してる。
> 転職したの。」
>
> 「あ!あ!じゃぁ、お姉さん、決まりだぁ。
> 俺と一緒に働こう?
> だって、勿体ねぇーべ?資格さぁ。」
>
> 「はぁ?」
>
> 「今の職場もたいしたことないでしょ?」
>
> 「まぁ。」
>
> 「なら決まり。
> 連絡先交換しよ?
> お姉さん。」
>
> 「ちょっと、待って。
> 名刺かなんかある?」
>
> 「あるっすよ〜(笑)
> はい、これ。」
>
> 愛生ってかいてあった。
>
> 「これ、本名?」
>
> 「よく言われるっすけど、本名です。
> 愛に生きるってかいて、あおいってよみまーす!」
>
> (まじか。)
>
> 「お姉さん、ラインいい?」
>
> 「 いいよ。」
>
> 何もない日常が何か起こるかもなんて思って交換してしまった。
> 奇遇にも専門学校の前だった。
> 学生の時にも何かあると思ってたけど、
> ただ待ってるだけでは何も起こらなかった。
> うまくできてる、人生って。
> 行動しないと始まらない。
>
> 「ありがとう、おねえさん!
> じゃぁ、連絡するね。」
>
> 「待ってる。」
>
> 「うん、じゃぁ、気を付けて帰ってねぇ。」
>
> さっきみた映画の内容を忘れちゃうくらい、
> 久しぶりにドキドキしたそんな帰り道。
> 僕は彼女が好きだ。
> クラスで一番可愛い、
> 学年で一番可愛い、
> 学校の中で一番可愛い、
> 下手したら、この町一番可愛いかもしれない、
> 彼女が好きだ。
>
> 一目ぼれだった。
> 同じクラスになったときから、
> 恋をした。
>
> あまりにも可憐だったから。
>
> 彼女を好きなのは、
> 僕だけじゃない。
> 他の男子も、
> 女子だって、
> 憧れているであろう。
>
> そんな彼女が泣いている。
> どうやら、
> 東京のオーディションに落選したらしかった。
>
> 信じられない。
>
> こんなにかわいいのに。
>
> もっとかわいい人がいるなんてことが。
>
> 皆で彼女を励ました。
> 大丈夫、
> 次こそはってね。
>
> 好きだけど、
> 彼氏になれるなんて思ってない。
>
> それよりも、
> 僕たちみんなは彼女の夢を応援したい。
>
> この町から女神が出るなんて、
> それこそ代々語り継ぎたい話じゃないか?
>
> お父さんは、
> 女神とクラスメイトだったんだぞってね。
>
> だから、
> お願い、
>
> どうか、
> 泣かないで、
>
> 笑っていてほしいだ。
>
> 君が笑うと、
> 皆笑顔になるよ。
>
> 間違いなく、
> 俺のアイドルではあるよ。
>
> それじゃ、
> ダメかな?
> なんてね。
--- amaamahinako@yahoo.co.jp wrote:
> 「好きですっ。」
>
> 放課後ずっと好きだったあいつに告白した。
>
> 「 ごめん。
> 誰だっけ?」
>
> 申し訳なさそうにそう言われた。
>
> 「同じクラスの、田村だよ。」
>
> 「そっか。
> ごめん、俺記憶力悪くて。」
>
> 知ってる。
> 暗記苦手なの。
> 歴史のテストいつも点数悪いのも知ってる。
>
> 入学して3ヵ月、
> いい加減覚えてくれててもいいんじゃないかなとかって思ったり。
>
> というか、
> すでにもう2回もごめんって言われてる私の気持ちも
> 考えてくれてもいいんじゃないかなとかって思ったり。
>
> 「ううん、仕方ないよ。
> 徳田、毎日部活忙しそうだもんね。」
>
> そういう所が好きだった。
> 毎日テニスに打ち込んでる徳田の姿に惚れたのだった。
>
> 「わりぃ、俺部活あるから。」
>
> 「あ、うん、わかった。」
>
> 私は科学部で科学部の窓の前にテニスコートがあった。
> 誰よりも沢山練習している徳田が私は好きだったのだ。
>
> 徳田はあっさりと私の目の前から居なくなった。
> 今日もまたラリーの練習をするのだろう。
>
> 「はぁ〜。」
>
> 思わずしゃがんだ。
> 勇気を出してみたものの、
> まっすぐに知らないと言われた。
>
> 話しかけたことなかったもんな。
> 私は先走ってしまったのだ。
>
> (何やってんだろう。)
>
> それから私は徳田に挨拶をするようになった。
>
> 「お、おはよう!」
>
> 最初はきょとんとした顔をしていた徳田だったけど、
> すぐに、
> あぁ、昨日のといわんばかりの顔になって、
>
> 「はよ。」と挨拶をしてくれた。
>
> 毎日おはようとまたねを頑張って繰り返すうちに、
> 徳田は笑顔で挨拶を返してくれるようになった。
>
> 「田村。」
>
> 初めて徳田から挨拶をしてくれたときの喜びは忘れられない。
>
> 「な、なに?」
>
> 「おはよう。」
>
> 「あ、おはよう。」
>
> じゃぁなと朝早くからテニスの練習をしていた徳田は、
> ほんのり汗の匂いがする。
>
> 放課後、
> 今日も徳田は懸命にボールを打ち返す。
>
> 私は今日も水の成分を顕微鏡で覗き見る。
> なんてことない毎日だ。
>
> 「田村っ!」
>
> 名前を呼ばれてばっと顔をあげると、
> 窓の所に徳田が居た。
>
> 「え?え?なに、どうしたの?」
>
> 「お前、科学部だったの?」
>
> 「そーだよ?」
>
> 「俺知らなかった。
> 今ぱってふとこっちみたら、
> なんか田村ぽいやついんなと思って走ってみたら、
> やっぱ、田村だった(笑)」
>
> 徳田は満面の笑顔で話しかけてくる。
>
> 「なぁ、なにしてんの?」
>
> 「水の成分見てたよ?
> 見る?」
>
> 「あ?観てぇけど、俺細かいの苦手なんだ。」
>
> 「わかる。」
>
> 「なんだと?」
>
> 「徳田は、豪快だもんね。」
>
> 「おう。」
>
> 沈黙。
> 徳田の少し上がった息遣いが空に響く。
>
> 「なぁ、田村は何で俺なの?」
>
> 「え?」
>
> 「なんで告白してきたんだよ。」
>
> 徳田を見ると顔を赤くしてうつむきがちにぼそぼそと話した。
>
> 「 一目ぼれだったよ。
> こっからさ、テニスコート見えるじゃん?
> 毎日真剣な顔して練習してる姿が、かっこいいなって思った。」
>
> 「うん。」
>
> 「それだけだよ。
> クラスでも徳田明るいしね。
> 面白そうとも思った。」
>
> 「うん。」
>
> 「徳田は、私のこと覚えた?(笑)」
>
> 「あったりめーじゃんっ!」
>
> ばって顔をあげる徳田。
> 「いいんだよ、私影薄いの知ってるから。」
>
> 「そんなことないよ、田村は、優しいよ。」
>
> 「そう、かな?(笑)」
>
> 「毎日挨拶してくれて、
> 癒されてた……。」
>
> 「なら良かった(笑)」
>
> 「なぁ、田村。」
>
> 「ん?」
>
> 「今も気持ち、変わってない?」
>
> 「え?」
>
> 「俺も、田村の事好きになったんだけど。」
>
> 顔をあげてまっすぐ見つめて告白してくる徳田は、
> 私の好きな真剣な顔をしていた。
>
> 「いいよ、
> 私も好き。」
>
> 「なら、付き合うべ?(笑)」
>
> 「うん。」
>
> 2人してはにかんだ。
>
> 先回って告白しちゃって振られちゃったけど、
> 今となっては素敵なきっかけの一つであった。