あいつは野球部だった。
毎日練習を頑張るあいつが好きだった。
「これ。」
「なんだよ。」
練習終わりにスポーツドリンクを渡す。
「水分とらないと、倒れるよっ。」
「ありがとな。」
私より1個したのに、
少し大人ぽいあいつが好きだった。
夏の甲子園。
暑い所は苦手だけど
私は毎年楽しみにしてる。
今年こそはレギュラーになれるかな?
なれるといいな。
期待しかなかった。
期待を込めて、
私は毎日応援に行く。
「お前、暇じゃねーだろ?
今年、受験だろ?」
「私はもう推薦とってるから、大丈夫なの。」
「いいよなぁ、頭いいやつは。」
「野球で推薦とれないの?」
「俺だってまだレギュラーでもないんだぜ?」
私の中ではどう考えても彼が一番エースなのだけれど。
うちの学校は、
野球の強豪校で、
部員がたくさんいるから、
仕方ない。
そう、
仕方ない。
仕方なくなんてないよ。
頑張って。
私のために。
なんてね。
今年の夏も、
残念ながら彼はレギュラーにはなれなくて。
それでも応援に行った。
ベンチで声を出してる彼は、
やっぱりかっこいい。
あーあ。
私大学行っちゃう。
地元離れちゃう。
想いを伝えようか伝えまいか、
迷うなぁ。
決めてたのに、
レギュラー入りしたら告白するって。
あーあ。
どうしよう。
ベンチかぁ。
もう1年待つべき?
せっかく毎日応援してたのに、
水の泡にならない?
それとも逆に、
毎日来てたのが来なくなって、
あれ?とか思っちゃう?
かな?
微妙。
私の存在感、
いかほど?
ふぅ。
甲子園のサイレンが鳴る。
彼の夏も終わったけど、
私の想いを告げてない夏も終わってしまった。
> 話したいことがいっぱいあった。
> けれども、
> 実際に会うと、
> 緊張して頭が真っ白になって、
> 何を話そうか
> 全く出てこないのだ。
>
> いつもそうだった。
>
> ふとした時に思い出しては、
> どうなったんだろう、あれは?
>
> 楽しいと思ったときにも、
> 教えてあげたいな。
>
> 悲しいときには、
> こんな気持ち経験しないといいな。
>
> いつも、
> 思っていた。
> 会うと、
> 思いがあふれだすのだ。
>
> そうだ、
> 今度から思いついたら
> メモに書こう。
>
> 手紙を書いてもいいかもしれない。
> すぐにメールしたっていいじゃないか。
>
> なんでもいいのだ。
>
> 君と話すことができたのなら。
>
>
>
>
>
>
>
> 0センチ。
> いつも、
> 言われた通りにしてきた、
> つもりだった。
>
> 黙って話を聞いて、
> 良い子にしてる、
> はずだった。
>
> 小さい時からそう。
>
> お菓子食べる前に、
> 手洗って、
> テーブル拭いて、
> 飲み物準備して、
> それから、
> 「いただきます。」してから、
> やっと食べれる。
>
> 残すことも、
> 多く食べることもない。
>
> 出された分だけを
> 食べる。
>
> それでいいって言われたから。
> 気が付いたら、
> 自分の意志なんていうものは、
> なかった。
>
> お人形さんみたいだなって思ったりもした。
>
> 突然だった。
>
> いきなり、
> 胸が苦しくなって、
> 息苦しくなったのは。
>
> 良い子でいることに、
> 退屈を越えて、
> 憂鬱になったのだ。
>
> もう、待てない。
> 我慢出来ない。
>
> 心の意志だった。
>
> どうせなら、
> 走ってみようか?
> 走っても、
> 走らなくても、
> 息苦しいに越したことはないんだし。
>
> どっちも、
> 同じなら、
> 自分の中に芽生えた、
> 意志を大事にしようと思った。
>
> 良い子ではなくなるかもしれないけど、
> 良い子ばかりがこの世に居る訳でもないでしょ?(笑)
>
> 私のクラスではいじめが行われている。
> 誰も止めない、
> 止める勇気を持っている者は誰もいない。
>
> こんなことを言っている私だって、
> 立派な傍観者であり、
> いじめを行っている一人なのである。
>
> あぁ、なんと無常なことか。
> 自分が可愛い。
> いじめられているあの子は可哀想。
>
> そうは思うが、
> 毎日穏便に生き抜くことで精一杯なのだ。
>
> いじめられたくない、
> その気持ちしか私にはないのだ。
> 可哀想とは思うけど、
> 同時に、
> 馬鹿なやつとも思う。
>
> きっかけは些細な事だった。
> あの時、
> もっとうまくやれていれば、
> あの子はいじめられることなんてなかった。
>
> 選択を間違ったのだ。
>
> まるで、
> ルーレット。
>
> 明日は我が身と、
> 嫌でもわかる。
>
> 昔、選択を間違ったことがあり、
> 私もいじめられたことがあった。
>
> 幸い、ターゲットはすぐに変わったが、
> とても辛く、
> すぐさま、
> スクールカウンセラーの先生に相談した。
>
> その時もらった飴玉を、
> 私は忘れられない。
>
> 大切な思い出だ。
>
> 私も誰かを救いたい、
> いや、
> 助けたい?
> もっと、簡単。
>
> 誰かの拠り所にでもなれたら嬉しいなと思った。
>
> でも、
> そんなことできるのだろうか?
>
> カウンセラーになるのが、
> 私の夢になった。
>
> でも、
> 今現在、
> いじめられている子を無視しているのに、
> そんな夢、
> 叶えていいのだろうか?
>
> 私は、卑怯者かもしれないと思うと、
> 口の中に、
> 苦みが広がった。
> 今日は、スーパーの特売日だ。
> 事前にチラシでチェックしてきた。
> 今日こそは、負けないっ!
>
> 引っ越してきてからというもの、
> ここら近辺には、、
> めちゃくちゃの競争率
> スーパーが1件しかなくなのである。
>
> 最初なんて惨事だった。
> たまたまふらっときた日が特売で、
> 店は激混み。
> 商品なんて見れたものではない。
>
> あまりの混みように、
> もうあんまり来たくないなんて思ったものの、
> ここら辺には、
> このスーパーしかないのだ。
>
> コンビニはおろか、
> 薬局ですらない。
>
> とんだ未発達の土地に引っ越してきてしまった。
>
> 私はこのスーパーで買い物をしなければ、
> 生きていけないのだ。
> 明日のへ繋げる為の食を買わなければいけないのだ。
>
> 元から人ごみが得意ではない。
> 意識してからの最初の特売日は、
> やっぱり、人の多さに圧倒されてしまって、
> ろくに商品を見れずに、
> 手あたり次第にカゴにいれて、
> 退散してしまった。
>
> 全然欲しい物を買っていなかった。
> 情けなくて、
> 涙が出る。
>
> 2回目はこれが欲しいと意気込んで行ったものの、
> 圧倒されて、
> というか、
> チラシについてる商品はさらに人の山になってしまっていて、
> とても近づけなかった。
>
> 今日が3回目。
> このスーパーに来るたび、
> 胃痛がする。
>
> でも、負けていられない。
>
> (今日こそ、買うぞ!)
>
> やはり、混んでいた。
> めちゃくちゃ混んでいる。
> 正直、帰りたい。
>
> 何で休みの日にまで、
> こんな苦しい思いをしなければならないのか。
> 一人暮らし、
> 一人で生活していくというのは、
> とても大変である。
>
> 勇気を出して、
> 私は今日こそ戦利品を持って帰路に立つ姿を思い描いて、
> 一歩を踏み出した。
> 昔、かいとくんから貰った手紙が出てきた。
> 幼稚園の時に貰った手紙だろうか?
>
> まいなちゃん。
> 大好きだよ!と書かれてある。
>
> この時は、
> 平仮名を覚えたての時だった。
>
> かいとくんは、
> 恥ずかしがったのか、
> ちょっと背伸びして漢字で書くものだから、
> 幼稚園の時の私には、
> 理解できなかった。
>
> ただ、渡す時に真っ赤な顔してたのだけは
> 汲み取って、
> ちゃんと読むものなんだとは感じていた。
>
> かいとくんは、
> この後すぐ引っ越してしまったのだった。
>
> それが、
> 今、高校。
>
> 目の前に居る。
> 名前は同じ、河村海斗。
> 多分、私の知っている海斗君だろう。
>
> 覚えているかな?
>
> 落としたシャーペンを拾ってあげたら、
> 赤い顔してありがとって言ったよ?
>
> 自惚れてもいいかな?
>
> 今度は私がお返事書くね。
> 伝わるように。
>
> 「かいとくんへ
> 私もだいすきだよ。」
> 気が付いた時には、
> もう感情なんてどこかへやっていた。
>
> 平穏に、
> 平坦に、
> 淡々と過ごす事が、
> 何よりも大事で、
> ストレスフリーだと思っていたから。
>
> 友達だと思っていた子が、
> 私の彼氏だと思っていた人と、
> 実は付き合っててと言われて、
> 訳が分からなかった。
>
> 彼氏に話を聞くと、
> ごめんと言われた。
>
> 「お前ってあんまり感情出さねぇから、
> 何考えてんのかわかんなくて、
> 困っちまうんだ。」
>
> と言われた。
>
> だって、感情的な
> ヒステリックな女は嫌じゃないの?
>
> 私が感情の波を荒立たせなければ、
> 全てが丸く収まる。
>
> 皆、幸せじゃない?
>
> 友達にも話を聞きに行ったら、
> ごめんと言われ、
>
> 「弓月、あんまり思ってること言わないから、
> 津城君の事そんなに好きじゃないかと思って。
> 実は、私、ずっと前から津城君の事、好きだったのっ。」
>
> と言われた。
>
> 私のため、
> 皆のためと感情を押し殺していたら、
> それが仇となり、
> 皆は自分の想いを第一優先にして、
> 楽しく暮らしていくみたいだ。
>
> あぁ。
>
> 私の感情、まだ生きてた。
>
> 悲しくて。
> 悔しくて。
> 寂しくて。
> 理不尽で。
>
> 涙が流れてくる。
>
> 良かった。
> 安堵した。
>
> 私、まだロボじゃなかった。
> ちゃんと、人だ。
>
> だって、泣ける。
> 怒ってる。
> 笑ってる。
>
> 感情があるって、素晴らしい……。
> 初めてスケッチブックを貰ったは、
> 幼稚園の時だった。
>
> クレヨンとスケッチブックに
> 絵をかくのが大好きだった。
>
> 何を書いても、
> 自由だからだ。
>
> 中学校からだったかな。
> 線の引かれたノートに規則正しく書かなければ、
> 見栄を張らなければいけなくなったのは。
>
> 書くことは好きだった。
> 寸分違いないデッサンで賞を頂いたこともあった。
>
> 嬉しかったけど、
> なんか物足りない。
>
> 日々、
> 風景画、人物画ばかりを描く。
>
> つまらなくはないけど、
> 幼稚園の時程の自由さがない。
>
> 美大に進めたけど、
> そこでもやっぱり、
> 写生ばかりだった。
>
> 私は、目で見たものを書き写す為だけに、
> 絵を描き始めたんだっけ?
>
> いいや、違う。
>
> もっと、こうだったら楽しいだろうなっていう夢とか理想を、
> カラフルに書きなぐってはいなかったか?
>
> 次のコンクール、
> 先生のアドバイスを無視して、
> はちゃめちゃにカラフルな風景画に仕上げたら、
> 賞はとれず、
> 先生も心配を通り越して
> 飽きれていたけど、
> 私は満足だった。
>
> これでいいのだ。